眼球でカメラのレンズのような働きをするのが「水晶体」で、この水晶体が濁った状態が「白内障」です。白内障になると、視界がかすむなどの症状が現われます。
白内障は、年齢を重ねると発症する事例が多い病気ですが、手術によって視力の回復は可能なのでしょうか?
今回は白内障の手術による「視力回復」にスポットを当て、具体的な手術内容・予想される術後の視力状態・リスクなどに関して、詳しく解説します。
白内障とは?
白内障とは、眼のなかの「水晶体」が白く濁ってしまう病気です。
水晶体はカメラのレンズのような役割を持つ部位で、ピント合わせや網膜への画像反映の機能があります。そのため、白内障で水晶体が白く濁ると、視界が白くかすむ・物がぼやけて見える・物が二重に見えるといった症状が出ます。多くは加齢で発症しますが、糖尿病や網膜剥離など別の眼の病気が原因で発症する場合もあるようです。また、眼の外傷、薬の副作用による症例もあります。例外を除き痛みがないため、気付かずに発症して症状が進行してしまう可能性のある疾病です。
白内障を治すには手術しかない
白内障に起因する視力障害が軽度の場合、眼鏡・コンタクトレンズの使用による視力矯正が可能です。屋外ではサングラスをかける、照明は肩越しにあてるなどの工夫で光がぎらつく現象の軽減もできます。
ただし、眼鏡・コンタクトレンズによる矯正や点眼治療が有効なのは、あくまでも症状が軽度の段階であり、この治療では一度濁ってしまった水晶体を元の状態には戻せません。
白内障の代表的な根本的治療は、手術です。白内障の手術では、「超音波水晶体乳化吸引術」と呼ばれる術法で行ないます。まず点眼麻酔を行ない、水晶体に小さな穴を開けます。その穴から、吸引器で白く濁った水晶体を砕いて吸い出す手術です。
この際、水晶体を包む薄い袋は残したままで、吸引のあと袋のなかに眼内レンズを入れます。所要時間は、通常10~15分程度(消毒・麻酔等含む)です。
白内障手術の現在の主流である超音波水晶体乳化吸引術は、水晶体が軟らかい早めの段階に実施することで合併症リスクが低くなり、手術後の乱視も少なく済むといわれています。
白内障手術で視力は回復する?
白内障の根本的治療法は手術であり、超音波水晶体乳化吸引術であれば通常10~15分ほどで終了します。では、手術すれば視力は回復するのでしょうか?手術で期待できる効果に関して解説します。
手術後も眼鏡は必要になる
白内障手術で用いられる「単焦点眼内レンズ」には、ピント調整機能がありません。手術後も基本的に眼鏡の使用が必要です。
水晶体は厚さを変化させてピント調節しますが、単焦点眼内レンズの場合、1ヵ所にピントを合わせるため、ピント調節ができません。白内障手術によって濁りは取れますが、ピントを合わせるためには眼鏡が必要なのです。
なお、白内障治療で使われる人工レンズには焦点が1つの「単焦点眼内レンズ」に加え、2点以上焦点を合わせられる「多焦点眼内レンズ」もあります。
多焦点眼内レンズは「遠くと近く」といった2点以上に焦点を合わせられるため、老眼対策レンズとしても注目されているレンズです。多焦点眼内レンズを使用した場合は、術後に眼鏡が不要になる場合もあります。
多くの方は加齢により、ピント調節力が衰えて老眼が進んでいるはずです。白内障手術で多焦点眼内レンズを採用すれば、水晶体の濁りが取れて視界がクリアになるだけでなく、老眼改善も期待できます。
レンズの種類ごとのメリット・デメリットを理解したうえで、適切に判断しましょう。
視力回復にかかる時間
白内障手術の切開傷は非常に小さく自然にふさがるため、一般的に縫合はしません。術後の短期間は、眼がかすんだり、光がまぶしく感じたりする方もいるようです。
術後数週間は炎症軽減・感染予防・完治を早めるために点眼薬を使い、さらに傷が完治するまでの2~3週間は、睡眠時に眼鏡か眼帯を装着して眼を保護します。手術翌日・1週間後・1ヵ月後の診察が一般的なスケジュールで、術後数週間から1ヵ月程度で視力が安定するようです。
手術の痛みについて
白内障の手術はほとんどの場合、点眼液や注射薬で眼の表面をマヒさせる「局所麻酔」をした状態で行なわれ、鎮静薬も投与されます。そのため、白内障の手術で痛みを感じる方はほとんどいないようです。
なお、手術中じっとしていることが難しい場合、全身麻酔が必要になるケースもあります。
白内障手術の合併症リスク
基本的に痛みもなく短時間で終了する白内障手術ですが、合併症などのリスクが気になる方も多いでしょう。
白内障手術後に起こりうる合併症としては、以下があります。
- 眼内炎や重度の出血による視力障害
- 眼圧上昇による緑内障発症や眼内レンズの位置ずれ
- 網膜の腫れや剥離
- 網膜に既往症がある人(糖尿病網膜症など)の視力低下
また、白内障手術では水晶体のうしろの「後嚢」を残しますが、手術後にこの後嚢が濁り視力が低下するケースがあります。後発白内障と呼ばれるもので、この場合、濁った部位にレーザー光線で光が通る「通路」を作る治療が一般的で、外来での治療が可能です。
白内障手術で重篤な合併症が発生することは、極めて稀です。手術翌日・1週間後・1ヵ月後など定期的に診察を受けておけば、万が一合併症が起こった場合も、早期発見で治療できるでしょう。
まとめ
白内障は水晶体が白く濁る病気です。原因の多くは加齢によるものですが、網膜剥離といった別の目の病気や薬の副作用などでも発症することがあります。
白内障の根本的な治療の主流は手術で、短時間で済み局所麻酔のため基本的に痛みも感じません。手術による矯正視力の見え方には個人差がありますが、水晶体の濁りが除去されるため、見え方が「クリア」になるケースが一般的です。
白内障は放置しておくと視力の低下が進み、最悪失明にいたってしまう可能性があります。早い段階での適切な治療が重要です。